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管理栄養士が贈る!心と体にやさしい介護食レシピ集

介護食とは、嚥下(えんげ)や咀嚼(そしゃく)が困難な方、または年齢や体調の変化によりいつもの食事量では栄養が不足しがちな方々のために工夫された食事です。介護食は、見た目や味だけではなく、食べやすさや咀嚼しやすい食感、そして栄養バランスも重視されており、心と体の健康維持に大きな役割を果たします。ここでは、管理栄養士の視点から、わかりやすく美味しい介護食レシピをご提案します。噛むことや飲み込むことが難しい方でも、少量でしっかり栄養を摂取できるよう、材料の切り方や調理法にこだわった工夫が盛り込まれています。

介護食の基本と選び方

介護食は、患者さんや高齢者の状態に合わせた硬さや形状になっており、主に次のような種類があります。

・ゼリー状やペースト状

嚥下障害がある方には、固形物を補助するためにゼリーやペースト状の食事が適しています。ゼラチンや滑らかなソースでまとめることで、口当たりが柔らかくなります。

・みじん切りや柔らかく煮る調理法

少し咀嚼できる方には、具材を細かく刻んだり、煮込んで柔らかく仕上げたりする工夫が有効です。また、温度や味付けを軽めにすることで、食べやすい料理に仕上がります。

・栄養補助の工夫

介護食は食事量が少なくなりがちなため、少量でも十分なカロリーやたんぱく質が摂れるように、栄養素を詰め込んだレシピが求められます。使用する具材やドレッシング、調味料の選定にも十分注意が必要です。

和風レシピでやさしく仕上げる

和風の味付けは、親しみやすく消化にも負担が少ないため、介護食のレパートリーとして人気があります。ここでは、食材の旨味を活かしたシンプルな調理法の和風レシピをご紹介します。

めんつゆで簡単 〜牛肉としめじのさっと煮〜

このレシピは、牛肉の柔らかさとしめじ、玉ねぎの甘みが絶妙にマッチした一品です。
■材料(2人分)
・牛ばら肉 … 140g(食べやすい大きさにカット)
・しめじ … 1/2株(約50g、子房に分ける)
・玉ねぎ … 1/2個(約100g、5mm程度の千切り)
・青ねぎ … 少々(仕上げに刻む)
■調味料
・和風だし(顆粒) … 小さじ1/3
・砂糖 … 小さじ2
・酒 … 大さじ1
・めんつゆ(3倍) … 大さじ1
・水 … 100mL
■作り方
1. 鍋に調味料(めんつゆ、水、酒、砂糖、和風だし)を入れて沸騰させる。
2. 玉ねぎと牛肉を加え、アクをすくいながら煮る。
3. しめじを加えてさっと煮込み、最後に青ねぎを散らして完成。
■ポイント
牛ばら肉を使用することで、柔らかくなり噛み切りやすい仕上がりに。脂っこさが気になる場合は、赤身部を選んでもよいでしょう。

定番の洋風レシピ~ロールキャベツ~

ロールキャベツは、野菜と肉の旨味がバランスよく融合した定番メニューです。具材をしっかりと煮込むことで、栄養と味わいが豊かになる料理です。

ロールキャベツの作り方

■材料(2人分)
・キャベツ … 4枚(約200g、耐熱ボウルでラップをかけて電子レンジで加熱して柔らかくする)
・牛豚合い挽き肉 … 160g
・玉ねぎ … 1/4個(約50g、みじん切り)
・パン粉 … 大さじ1
・牛乳 … 大さじ1
・塩コショウ … 少々
■煮込み用スープ
・トマトジュース … 200mL
・水 … 100mL
・カットトマト(トマト缶) … 1/2缶(約150g)
・トマトケチャップ … 大さじ1
・コンソメ … 小さじ1
・塩コショウ … 少々
■作り方
1. キャベツは耐熱ボウルに入れラップをかけ、電子レンジで3~4分加熱し、柔らかくしてから粗熱をとる。
2. 挽き肉にパン粉、牛乳、塩コショウ、みじん切りの玉ねぎを加え、よく練る。
3. 4等分にした種を、それぞれキャベツで包む。
4. 鍋に巻いたキャベツを並べ、トマトジュース、水、カットトマト、コンソメを加え、弱火で約20分煮込む。
5. 味を整えたら、温かいスープとともにお召し上がりください。
■ポイント
仕上がったスープは冷凍保存が可能なので、まとめて作っておくと便利です。また、残りのスープにご飯を加えれば洋風おじやとしても楽しめます。

栄養たっぷり!副菜レシピ

副菜は、主菜の栄養バランスを支え、彩りや食感のバリエーションを加える重要な存在です。ここでは、手軽に作れるレンジ調理や軽い冷菜レシピをご紹介します。

野菜はレンジで手間無く 〜ポテトサラダ〜

このポテトサラダは、じゃが芋や人参、きゅうりを用いて、電子レンジで簡単に調理できるレシピです。
■材料(2人分)
・じゃが芋 … 中2個(約160g、皮をむき、芽を取った後、ラップに包んで電子レンジで6~7分加熱)
・人参 … 約30g(薄いいちょう切り、電子レンジで1分加熱しておく)
・玉ねぎ … 1/4個(約40g、薄切りして水にさらし、しっかり水気を絞る)
・きゅうり … 1/2本(約40g、薄切り)
・ゆで卵 … 1個(粗めに崩す)
・ロースハム … 2枚(細切り)
・マヨネーズ … 大さじ3
・塩コショウ … 少々
■作り方
1. じゃが芋は熱いうちにボウルに移し、マッシャーで潰し、軽く塩コショウで下味をつける。
2. 人参は加熱後、粗熱をとっておく。
3. 玉ねぎときゅうりは薄切りにし、しんなりさせた後、十分に水気を切る。
4. 全ての具材にマヨネーズを加え、塩コショウで味を調整し、器に盛り付ける。
5. 仕上げにレタスやお好みでドライパセリを散らして完成。
■ポイント
じゃが芋は熱いうちに手早く潰し、下味をしっかりつけるのがコツです。レンジを活用することで手間を大幅に省ける点も魅力です。

春菊を美味しく 〜春菊のツナ缶和え〜

春菊は、独特の風味と栄養価の高さから、介護食にも適した緑黄色野菜です。ツナ缶との相性も抜群で、簡単な和え物としておすすめです。
■材料(2人分)
・春菊 … 6~8株(約140g、下の硬い茎部分を切り落とし、食べやすい大きさにカット)
・ツナ缶(ライトタイプ) … 1缶(約70g、油を軽く切る)
・ごま油 … 小さじ2
・塩コショウ … 少々
■作り方
1. 春菊は塩を加えたお湯でさっと茹で、冷水で冷やして水気をしっかり絞る。
2. ボウルに春菊とツナ缶、ごま油を加え、よく混ぜ合わせる。
3. 塩コショウで味を整えて、皿に盛り付け完成。
■ポイント
春菊が苦手な方には、茹でた人参やカニ風味かまぼこを混ぜ込むと彩り豊かに仕上がります。栄養バランスを考えた一品として、介護食の副菜に最適です。

デザートで彩る心温まるひととき

介護食は食事全体のバランスが重要ですが、食後のデザートも気分転換に役立ちます。ここでは、簡単に作れるデザートレシピを通して、口元から笑顔を引き出すお菓子をご紹介します。

簡単!美味しい 〜チョコレートプリン〜

チョコレートプリンは、ゼラチンを使って滑らかな口当たりに仕上げたデザートです。甘さとほのかな苦みが、大人の嗜好にぴったりです。
■材料(約6個分)
・粉ゼラチン … 5g(30ccの水でふやかす)
・砂糖 … 40g
・ココア(プレーン粉末) … 大さじ2(約40g、少量のお湯で溶く)
・牛乳 … 300cc
・生クリーム … 100cc
・ホイップクリーム … 少々(仕上げに添える)
■作り方
1. ふやかしたゼラチンは砂糖と混ぜ、電子レンジで1分〜1分10秒加熱し、砂糖が溶けるまでよく混ぜる。
2. 溶かしたココア液を加えて、さらに混ぜ合わせる。
3. 牛乳と生クリームを加え、均一な液にした後、型に流し入れる。
4. 冷蔵庫で約2時間冷やし固め、固まったらホイップクリームをトッピングして完成。
■ポイント
砂糖の量はお好みで調整可能です。ゼラチンを加える際は、しっかりと溶かすことがポイントです。イベントシーズンの特別な一品としても最適です。

炊飯器で作る一汁三菜 ~切り干し大根とツナの炊き込みご飯~

介護食として、栄養バランスの取れた炊き込みご飯は、作り置きにも適しています。ここでは、切り干し大根の旨味とツナの風味が溶け込んだ、ヘルシーな一品をご紹介します。

切り干し大根とツナの炊き込みご飯の作り方

■材料(茶碗2~3杯分)
・米 … 1合(洗って水切りする)
・切り干し大根 … 約15g(十分に水で戻し、絞り、細かく切る)
・ツナ缶(ライトタイプ) … 約40g(オイルも一緒に使用することも可能)
・和風だし … 小さじ1/2
・醤油 … 小さじ1
・塩 … 小さじ1/5
・青ねぎ … 少々(みじん切り、彩り用)
■作り方
1. 洗った米に、戻し汁も利用して必要な水加減に調整する。
2. 切り干し大根とツナ、和風だし、醤油、塩を加え、大まかに混ぜ合わせる。
3. 普通の炊飯器モードで炊飯する。
4. 炊き上がり後、茶碗に盛り、刻んだ青ねぎをふりかけて出来上がり。
■ポイント
ツナ缶はオイルと一緒に使うことでコクが出ます。ツナの代わりにしらすを使用する場合は、塩加減を調整しながらお試しください。

温かいスープで体をぽかぽかに ~かぼちゃの豆乳スープ~

消化に優しく、体を内側から温めるスープは、食事の最後にぴったり。特にかぼちゃの甘みと豆乳のまろやかさがマッチしたスープは、寒い季節や体調管理に最適です。

かぼちゃの豆乳スープの作り方

■材料(2人分)
・かぼちゃ … 100g(種とワタを取り、1~2cm角にカット)
・玉ねぎ … 50g(1/4個分、角切り)
・ベーコン … 20g(約1枚、角切り)
・豆乳 … 200cc
・コンソメ … 小さじ1
・塩コショウ … 少々
・ドライパセリ … 少々(仕上げ用)
■作り方
1. 鍋にかぼちゃ、玉ねぎ、ベーコン、コンソメ、かぼちゃがかぶる程度の水を入れて火にかける。
2. かぼちゃと玉ねぎが軟らかくなるまで煮込み、ベーコンも加えてひと煮立ちさせる。
3. 豆乳を加えて軽く温め、塩コショウで味を整える。
4. 器に盛り、ドライパセリを散らして完成。
■ポイント
かぼちゃのβ-カロテンは免疫力向上に効果的です。野菜がやわらかくなるまでじっくり煮ることで、噛む力に負担がかからない食感に仕上がります。また、加熱後は豆乳を入れてひと煮立ちさせる程度に調整してください。

まとめ ~心と体にやさしい介護食の未来~

介護食は、単なる栄養補助にとどまらず、食事を楽しむ時間を提供する大切な存在です。ここで紹介したレシピは、管理栄養士の知識を活かし、素材の良さを最大限に引き出すために工夫が施されています。
・和風の優しい味付けで消化しやすい料理
・栄養バランスと見た目の彩りを意識した調理法
・手軽に調理できる電子レンジや炊飯器の活用
・少量でしっかり栄養を補える工夫
毎日の食事を通して、利用者やそのご家族に「美味しい」「安心」と感じていただける工夫を積み重ねることが、介護食の重要な側面です。さまざまなレシピを取り入れることで、単調になりがちな食卓にも彩りが加わり、心も体も満たされる食生活を実現しましょう。
今回ご紹介したレシピは、介護状況や個々の体調に合わせて、食材の形状や硬さ、量を調整可能です。料理の工程をシンプルにすることで、調理者の負担も軽減されるとともに、利用者の皆さんに安心して召し上がっていただけるよう工夫されています。栄養豊富な主菜に、さっぱりとした副菜、そして温かいスープやデザートと、バランスの取れた食事は、介護現場において大いに役立つものです。
今後は、さらに多様な食材や調理法を取り入れ、介護食のレパートリーを広げる努力が求められるでしょう。管理栄養士の視点から、新しい挑戦と改良を重ねながら、利用者の健康と笑顔が守られるよう、日々の料理づくりに取り組んでいきましょう。
本記事が、介護食に携わるすべての方々の参考になり、いつもの食卓に温かな彩りと安心感を与える一助となることを願っております。

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