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【図解で解明】迷わない介護食選び―4タイプの全貌とケース別アドバイス!

現代の高齢化社会において、噛む力や飲み込む力の低下は多くの高齢者が直面する課題です。介護食は、そのような方々が安全に、かつ美味しく食事を楽しむために開発された特別な食品です。食材の硬さや形態を工夫することで、飲み込むリスクを低減するとともに、食事の楽しさを損なわないよう配慮されています。本記事では、4つのタイプに分かれる介護食の全貌と、ケース別の選び方について、図解も交えて分かりやすく解説します。

介護食とは?背景とコンセプト

高齢者と嚥下障害の現状

加齢に伴い、歯や咀嚼機能の低下、そして嚥下機能の衰えは多くの高齢者に共通する現象です。こうした現状を踏まえ、食事の摂取が困難な方々でも安心して栄養補給ができるよう、介護食は考案されました。従来の食事を単に柔らかくするのではなく、食材の見た目や味わい、栄養価が損なわれないよう、さまざまな工夫がなされています。

介護食の目的

介護食の主な目的は、嚥下(えんげ)障害や咀嚼(そしゃく)能力の低下に配慮しながら、利用者の自立した生活や安心できる食事シーンをサポートすることにあります。個々の能力に合わせた食事を提供することで、誤嚥性肺炎などの健康リスクの低減も目指しています。

ユニバーサルデザインフード®による4つの区分

日本介護食品協議会が定めた自主規格「ユニバーサルデザインフード®」は、介護食のかたさや形状を、利用者の咀嚼力・嚥下力に合わせて4つの区分に分類しています。以下、各区分の特徴と具体例を詳しく見ていきましょう。

区分1:容易にかめる(軟菜食)

区分1は、通常の食事に最も近い形態ですが、かたさや大きさに若干の配慮がされています。噛む力は通常通りあるものの、やや硬いものや大きな食材は困難になる場合もあるため、適度な柔らかさが求められます。
具体例としては、やわらかごはん、焼き魚、厚焼き卵や、やわらかい煮込み料理など、見た目にも普通の食事と変わらないものが挙げられます。

区分2:歯ぐきでつぶせる(ソフト食)

区分2は、歯ぐきでつぶすことができる程度のやわらかさに調整された食事です。やや硬かったり大きめの具材は避けられるものの、多少の噛む作業が求められます。見た目の美しさや栄養バランスも考慮され、通常の食事に近い形で提供される場合が多いです。
たとえば、やわらかい全がゆや煮魚、具材が少し小さめになった肉じゃが、完熟バナナなどがこの区分に該当します。

区分3:舌でつぶせる(ミキサー食)

区分3は、咀嚼の負担が大きくなる利用者向けに、例えばミキサーで細かくしたり、ムース状に再形成した食品が対象です。固形物の形態や不均質なものがある場合でも、舌と口蓋の間で容易につぶせるように調整されています。
実際の食品例としては、全がゆ、粘度を加えた魚のほぐし煮、さらにやわらかく加工した肉じゃが、絹ごし豆腐など、口の中でまとまりやすい状態にされたものが挙げられます。

区分4:かまなくてよい(流動食・ペースト状)

区分4は、固形物を噛む必要が全くない、より流動性の高い食品が特徴です。全体的に均質でなめらかな状態に仕上げられており、誤嚥リスクが高い利用者に特に推奨されます。
代表的な例として、ペースト状のがゆ、白身魚のうらごし、滑らかな茶わん蒸し、ペースト肉じゃが、さらにやわらかいプリンなどがあり、常に安全に摂取できる状態を目指しています。

表で見るユニバーサルデザインフード®の区分比較

区分 咀嚼の目安 飲み込む目安 食品例
区分1
容易にかめる
かためでも通常に噛める 普通に飲み込める やわらかごはん、焼き魚、厚焼き卵等
区分2
歯ぐきでつぶせる
やや軟らかいものが望ましい 場合により飲み込みづらい事も 全がゆ、煮魚、だし巻き卵、やわらか肉じゃが等
区分3
舌でつぶせる
細かいまたはとろみがある状態 水分の取り方に注意 ムース状食品、絹ごし豆腐等
区分4
かまなくてよい
固形物不要 そのまま飲み込める ペーストがゆ、プリン状食品等

スマイルケア食による介護食の選び方ガイド

スマイルケア食は、農林水産省が推進するもう一つの基準であり、用いる食品に対して「噛む力」と「飲み込む力」の状態ごとの具体的な目安を定めています。ユニバーサルデザインフード®が主に形状や見た目を重視しているのに対して、スマイルケア食は健康維持と栄養補給の観点も取り入れ、より細かな区分が設定されています。

スマイルケア食の区分と特徴

スマイルケア食の区分は、対象となる利用者の嚥下能力や栄養補給の必要性に合わせ、複数のカテゴリーに分類されます。
・青マークは、噛む・飲むことに通常の問題がなく、健康維持及び栄養補給を行いたい利用者向け。
・黄マークは、噛むことに困難がある方向けの食品となり、通常の固形物よりも柔らかく加工されています。
・赤マークは、飲み込む際に問題が生じやすい利用者向けに設定され、より流動性の高い状態に仕上げられています。
例えば、スマイルケア食区分5は、容易に噛み切れる食品を指し、区分4は歯ぐきでつぶせる中間の硬さを示します。また、区分0〜2は、嚥下に問題がある方に対して、固形物を極力除いた均質な食品として提案され、口の中での安全な摂取をサポートします。

健康と栄養補給の視点から見る選び方

スマイルケア食は、単なる介護食の形態だけでなく、高齢者の低栄養対策としても注目されています。たとえ噛む・飲む能力に問題がなくとも、十分な栄養が摂れていなければ、日々の生活に不調を招く可能性があります。こうした視点から、利用者の健康状態や栄養バランスを総合的に判断し、適切な区分の食品を選ぶことが求められます。

ケース別アドバイス―あなたに合った介護食の選び方

介護食の選び方は、個々の利用者の状態に合わせた細やかな配慮が必要です。ここでは、いくつかのケースに分けて具体的にどの区分が適しているか、その判断基準と注意点を解説します。

ケース1: 噛む力は十分だが、少し硬い食品に抵抗がある場合

このような利用者には、区分1「容易にかめる」または区分2「歯ぐきでつぶせる」食品が適しています。普段の食事に近い形態を保ちつつ、かたさを若干軽減することで、安心して食事ができるように工夫します。
【アドバイス】食材を大きく変えるのではなく、調理方法で柔らかさを調整することが鍵。たとえば、柔らかく炊いたごはんや煮魚、卵料理など、通常のメニューを微修正する方法が有効です。

ケース2: 噛む力が低下し、固形物を十分に噛めない場合

噛む力の低下が顕著な場合、区分3「舌でつぶせる」や区分4「かまなくてよい」の食品が推奨されます。これらは、ミキサー加工やペースト状にすることで、口内での負担を大きく軽減する工夫がなされています。
【アドバイス】食事の形態を変える際は、見た目の美しさや栄養バランスも維持するよう、調理法や盛り付けにも配慮しましょう。場合によっては、管理栄養士や医師と相談の上、段階的に食事形態を変更していくと良いでしょう。

ケース3: 嚥下(えんげ)に不安がある方

誤嚥のリスクが拡大している利用者の場合は、区分4「かまなくてよい」だけでなく、スマイルケア食の嚥下困難者向けの区分(例えばスマイルケア食区分0または1)が適用されることが多いです。これにより、固形物の摂取を一切なく、均質で口当たりの滑らかな食品を提供します。
【アドバイス】誤嚥による健康リスクを徹底的に回避するため、嚥下調整食の導入やリハビリテーションの併用も検討することが大切です。専門家(医師、歯科医師、管理栄養士)との相談が不可欠です。

ケース4: 栄養不足が懸念される利用者の場合

たとえ噛む・飲む能力に大きな問題がなくても、栄養補給が十分でない場合、スマイルケア食が提案する栄養補助食品の利用が効果的です。青マークの食品は、健康維持と栄養補給を主目的とするため、日常の食事に加えて、補助的な栄養摂取を補強してくれます。
【アドバイス】栄養バランスの見直しや、必要に応じたサプリメントの併用も検討し、総合的な栄養管理を行うことが大切です。

市販の介護食品の現状と取り入れ方

介護食品は、従来の調理済み食品から常温で保存可能なレトルト品、ゼリー状、冷凍、さらにはチルド食品まで、非常に多様な製品が市場に出回っています。これにより、家庭での手作りが難しいと感じる方でも手軽に取り入れられるようになっています。

購入経路と選択のポイント

スーパー、ドラッグストア、介護用品店に加え、インターネット通販など、多くのルートから購入が可能です。選択する際には、必ず食品のパッケージに記載されているユニバーサルデザインフード®やスマイルケア食の区分表示を確認し、自分や介護される方の咀嚼・嚥下能力に合ったものを選びましょう。また、栄養面や味わいにもこだわり、食べる楽しさを維持できる商品を選定することが重要です。

介護食を取り入れるメリット

・家族や介護者の負担軽減: 調理や盛り付けの手間が省けるため、毎日の介護がスムーズになります。
・安全性の確保: 嚥下リスクを低減し、誤嚥性肺炎などの健康被害を防ぐ効果が期待されます。
・栄養管理の向上: 市販されている製品は、栄養バランスがきちんと管理されているため、偏りの少ない食事が補えます。
・多様な商品展開: レトルト食品、ゼリー、冷凍食品など、ライフスタイルや体調に合わせた多様な選択肢が存在します。

介護食の選び方における注意点と専門家の活用

介護食選びは、見た目やかたさだけでなく、利用者の現在の健康状態、嚥下能力、栄養状態を総合的に判断する必要があります。日々の変化に応じた調整が求められるため、以下の点に留意しましょう。

利用者個々の能力を正しく把握する

まず、普段の食事シーンをよく観察し、噛む力や舌でつぶす力、飲み込む際の様子をチェックします。場合によっては、嚥下障害専門の検査や、歯科、医療機関での診断を受けることも大切です。

専門家との連携の重要性

介護食の選定に不安がある場合、医師、歯科医師、管理栄養士など、専門家の意見を取り入れることは非常に重要です。専門家は、利用者の身体状況や生活環境に合わせた最適な食事形態を提案してくれます。また、定期的な健康チェックを行いながら、食事の形態を見直すことで、より安全で豊かな食生活を実現することができます。

自分に合った食事の段階的な変更

場合によっては、リハビリテーションやデンタルケアを通じて、咀嚼力や嚥下力が改善されるケースもあります。そのため、固定的な区分に囚われず、段階的に通常の食事へ移行することも視野に入れると良いでしょう。常に「その人に最適な状態」を探りながら、柔軟に対応する姿勢が求められます。

まとめ: 迷わない介護食選びへの道

介護食は、単なる栄養補給の手段に留まらず、利用者の生活の質を大きく左右する重要な要素です。ユニバーサルデザインフード®の4つの区分や、スマイルケア食の多様な分類を理解することで、利用者一人ひとりに最適な食事を提供することが可能となります。
具体的には、噛む力や飲み込む力、さらには栄養面のバランスを慎重に判断しながら、専門家と連携して食事の見直しを行うことが大切です。また、市販の介護食品は多彩なラインナップが用意されており、家族や介護者の負担を軽減する有効なアイテムとなります。
今後、介護食の分野はさらに進化していくことが予測されるため、常に最新の情報にアンテナを張り、利用者の安全で豊かな生活をサポートする選択を心がけたいものです。
以上のポイントを踏まえ、介護食選びに迷ったときは、ぜひ本記事で紹介した知識やケース別のアドバイスを参考に、自分や大切な方に最適な一品を見つけていただきたいと思います。

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